人生の折り返しを迎えた頃、少しだけペースを落としてゆったりと時間を過ごしてみたくなりました。
これまでの道のりが、決して急ぎ足ばかりだったわけではないけれど、それでもずいぶんと多くのものを見落とすくらいの速さで、ここまで来てしまったことは否めません。
そろそろ自分のタイミングで歩幅を緩め、自分の意思で立ち止まりたい。
でもそこではたと考えます。ゆったりと時間を過ごすってなんだろう。
ましてや時間は皆に平等で、自分の時間だけ引き延ばすことはできません。
ならばせめて、心のゆとりは大切にしたい。
たとえばそれは、一口の珈琲を飲み込んで、ほっと一息ついたときの充足感。
あの至福の気持ちを持ち続けたくてこのカフェをオープンさせました。
珈琲を飲んだときの充足感は単にその味わいだけから得られるものではありません。
珈琲の味わいを引き立ててくれる食事や器。体を預ける椅子や、気の利いた音楽。
時にはそこに至るまでの自分の在り方さえ、この「ほっと一息」に影響してくることは齢を重ねてわかってきました。
そこで、トックリキワタ珈琲店ではお客様にはもちろんのこと、店主自らも心地よい一息をつけるよう、多くの「手仕事」にお手伝い願い、空間を作り上げることにいたしました。
ここに掲載させていただいた方々は皆さん、単なる生産者ではなく、ものづくりを通してご自身を表現なさっていらっしゃいます。そして誰よりもご自身が作られたものに愛着と誇りを抱いていらっしゃいます。
そんな職人さんに思いを馳せながら珈琲を一口啜り、心地よい「ほっと一息」をついていただけたら幸いです。
トックリキワタ珈琲店